考えること 考え続けること

 

6月9日 最悪の目覚めだった

 

6月6日 自担と自担の親友が未成年との飲酒問題でヤフーニュースに載った

6月7日 彼らの処分が決定した。Twitterのトレンドが彼らの関連ワードで埋まるのを初めて見た

6月8日 自担が生放送のレギュラー番組で謝罪した

やつれて憔悴して目の下に隈を浮かべて、終始表情が強張っていた。

絶望しか映ってないんじゃないかってくらい真っ暗な瞳がこっちを見ていた。

朝起きて真っ先に思い浮かんだのがあの顔だった。

 

 

未成年の飲酒は法律で禁止されている。

未成年者の飲酒を知って制止しなかった親権者や監督代行者に対して、科料を科す」

未成年者飲酒禁止法第3条2項で定められている。

私は事実関係を調べる立場にないし、法的判断を下す立場でもない。ただ報道されている「20歳と聞いていた」という証言・証拠に基づけば、罰則の要件は成立しないはずだ。監督代行者とも見なされないのではないだろうか。某番組の弁護士の見解は「ただ一緒に飲んでいたという程度では処罰の対象にはならない」であった。

 

コールする/飲酒を煽る/強要することに関して、同弁護士は「場の雰囲気を盛り上げるためにコールをかけたくらいであれば強要罪が成立する可能性は低い」「無理やり飲ませて急性アルコール中毒にさせた場合は傷害罪もしくは過失傷害罪が成立する可能性がある」と述べていた。

 

現時点で明らかになっている2人の行為は刑事罰対象にはならないだろう。

 

ただし、未成年と酒席を共にしていたことや、お酒を煽るという危険行為、それを制止しないことは、社会道徳的に「悪」とされる。人として、社会道徳に反した行動をとったのは間違いないだろう。

 

今回の行動に関して、「彼らは悪くない」と擁護するつもりは微塵もない。相手が20歳と偽ろうが録音してようが、それが彼らの行動を正当化するものにはならない。

自らの行動を「反省する」と口にしたからにはその通りにしてほしい。

 

 

 

 

 

 

だがしかし、私が彼らを好きな気持ちは今回のことで全く傷つけられていないのである。

まず真っ先に思ったのは

 

ばーーーか!!知ってたよ、知ってた。あなた達はそうだってわかってた。なんも最初の印象と変わってないわ、それでも好きになったんだよばか!

 

だった(友人とのLINEに残ってる。あの晩ぐちゃぐちゃな気持ちを聞いてくれて本当に感謝だ。)

ファンにしちゃひどい言いっぷりかもしれない。けど、自担の親友がチャラくて大勢の人たちと派手に遊ぶのが好きなのも、自担がばかみたいに親友に甘いのも、私が好きになった2人のイメージそのままだった。

いちオタクの妄想だ。が、親友に呼ばれるがままよくわからない集まりに顔を出して、なんとなくその場に紛れながらお酒を飲み、なんだかんだ親友の男友達(顔見知り)と話が弾んで、親友がパリピっぽく盛り上げるのを横目にしている様子が、一瞬で想像できてしまった。

なになに昨年12月か、2年がかりで書き上げた新刊が出た後かな。一段落ついて息抜きできたんかなーなんて、自担に甘々なオタクですよ。

 

 

まだそういうの好きだったのね。

そう思わなくもない。

けど、私だっていい年してアイドルにうつつを抜かしている。うちわ作って自担カラーのワンピース着てキャーキャー言いながらライブを楽しんでいる。世間の人からしたら、いつまでも若い男追いかけてないで年相応の高尚な趣味を持てよBBAとか思われているかもしれない。

でもさ、好きなものは好きなんだよ。いくつになったって好きなんだよ。好きでいさせてくれよ。周りに迷惑かけないように気をつけるからさ。

私は他人の趣味嗜好にまで口出ししたくない。好きなものを楽しむ権利は誰にだって許されてほしい。2人にもプライベートは好きなことをしてストレス解消して楽しく生きていてほしい。成人してれば若い男女を集めた酒席を楽しんでいいし、いつまでも学生時代の延長のように親友とつるんでたっていいし、ほんと好きにしたらいい。

 

 

ただその「好き」が何かを損ねてしまうのであれば、どうすべきか考えた方が良いとは思う。

事務所が報道関係者に送った文書では「特に報道番組に携わる者としては厳に慎むべき」と反省を促していた。彼らはキャスターとして、コメンテーターとして、社会のあらゆる出来事を伝えたり意見を述べる仕事を任されていた。今回のことで中止・延期・検討を余儀なくされた仕事がいくつもあった。関係者の方々は急な対応に追われることになっただろう。その中にはグループとしての仕事もある。アニバーサリーイヤーを迎えてこれまでにないほど多くの活動を企画してもらって、準備しているところだった。他のメンバーが関わる活動にも自動的に影響が出ることになった。

情報解禁されていないだけで今後任されるはずだった仕事もあるだろう。成功したら手に入れられるチャンスもあったかもしれない。期待されていたかもしれない。

そうした責任を果たすために、周囲の期待を裏切らないために、「好き」の気持ちを上手に満たすやり方があったのではないだろうか。年齢を偽って入り込めてしまう人間関係を作らないとか、人の健康や尊厳を損なわない楽しい飲み方・盛り上げ方を考えるとか、気になることがあれば仲間内できちんと注意し合える関係性を築くとか。

そこは本当にもったいない、こうなる前に早く気づいてほしかった、と思う。

 

 

 

今ここに列挙したものの中に、ファンを入れていない。

アイドルとして対ファンについての私自身の考えは、もう少し整理したい。

 

自担が謝罪した番組内で、共演者の方が「音声が出ている(録音されている)ということで、もうそこから何かは始まっていた」「飲酒の前に問題はあった」とおっしゃっていた。

私にはこの「問題」の始まりは飲み会の開始時点ではなく、もっと根深いように思える。

 

 

昨年の春、Twitter上で「裏垢」「愚痴垢」「暴露垢」「情報垢」なるものが大量発生した。

きっかけは今回謹慎となったメンバーの熱愛疑惑だった。ネット上で彼女ではないかと噂される女性が見つかり、その方のSNSを隅々まで調べ尽くして「匂わせ」の証拠を探し出し、「こんな女と付き合っている」「アイドル失格」「人間のクズ」と罵る界隈が出現した。そのうちツーショット(に見える)写真や、いつのものかもよくわからない音声を流出する者が現れて、それらに即座に飛びつくようになった。彼とつながっていると自称する者から真偽不明の情報が流されるたびに激烈な反応を見せ、「表垢のお花畑なファンと違って彼のこんな裏の顔を知っている」「またクズなエピソードが出てきた」と叩きまくるコミュニティーが1,2ヶ月程度で出来上がった。

毎日新たな情報を求めるうちに、「最近逮捕(後に釈放)された人物の過去のSNS投稿に、あるメンバーが写っている」ことがわかり、「犯罪者と関わりがある」「あいつもクズだ」とターゲットが増えた。一応出所の明らかな写真でネタとしてもセンセーショナルだからか、それなりに大きな大衆紙も食いついて面白おかしく書き立てた。アクセス数目当てのネット記事が大量発生した。

これら全部、ファンが探し当てて糾弾したものだ。

元ファンやアンチも混じっているかもしれないが、長期間執拗なまでに追求し続けるその執着心は、愛憎からくるものと言っていいだろう。

 

一つ一つの情報に不安を掻きたてられ、ネガティブを共有する仲間内で何か噂が流れるたびにアクセスして確かめずにはいられなくなり、不安が不安を呼ぶ悪循環を繰り返すうちに、もはやそういうファンが、ネットで利益を得たい者や自己顕示欲を満たしたい者たちの格好の餌食になっていったと思う。

 

この事態に気づいて本人たちがプライベートの行動にもっと用心するようになっていたら良かったのかもしれない。が、それに気づけなかったか甘かったか。収束を見せるより前に問題となった飲み会は行われた。

はなからいつか何かに使えると思って録音されていたのではなかろうか。これは完全に私の予想だが、流出させた本人は「未成年」という部分がクローズアップされることに気づいていなかったのではないだろうか。愚痴垢・暴露垢・情報垢がこの情報提供者がかつて「19歳」と名乗っていたことに気づき、ご丁寧に当時のプロフィールのスクショまで証拠を揃えてくれた。某週刊誌の記者はTwitterを眺めているだけで記事に必要なネタのほとんどを手に入れて金を稼げた。

 

こういうアカウントは何を目的にやっているのかなぁとずっと思っていた。

そのメンバーに芸能界から消えてほしいの?それでグループを解散してほしいの?彼がいなくなってもグループは続けられるなんて根拠のない甘い発想どこからくるの?

彼を正したい?グループが好きだから変わってほしかっただけ?Twitterでタグつけてつぶやけば自分の意見に気づいてもらえると思った?

気づいてくれたのは金欲か自己顕示欲にまみれた捕食者だったね。

 

結果的にグループは今、先行き不透明な窮地に陥っている。メンバーの一人が活動自粛、一人が厳重注意。世間から大バッシングを浴びている。

 

こんなはずじゃなかった??こんな事態は望んでいたのと違う????

 

私はあの光のない目をした自担の顔が何度も浮かんでは、脱力している。

この事態の直接的原因は確かに本人たちの社会道徳に反した行動ではあるが、罠を仕掛けて吊るし上げたのはファンだ。

 

私には、ファンが思う「アイドルとして」の部分が2人を窮地に立たせたように思えてならない。ファンが「アイドル」に求める水準に足りないことへの不満が正義の鉄槌となって振り下ろされた。

もちろん「アイドルだから」「ファンがいるから」彼らの仕事があるのだろう。だけど、その「アイドル」って一体どこまで求められているの?ステージでファンを楽しませるだけじゃだめなの?ネットを漁りまくっても日常生活を送る人間としての情報は何も出てこないような、記者から一般人まで情報に飢えたファンを釣り上げようと企む人間を逐一見破って拒絶するような、清廉潔白な聖人君子じゃなきゃアイドル失格なの?女と遊んでるのがこの世界の誰かに見つかるようじゃ「アイドルとしての自覚が足りない」?

そんな「隙のあるアイドル」は許されない???

 

夢を与えるのが「アイドルの仕事」。だからファンの夢を壊すような姿を見せてはいけない。

正論だ。

この情報化社会で、監視社会で、この正論を振りかざして「隙のあるアイドル」をバサバサ切り捨てていった先に残る「アイドル」ってなんだろう。妖精さんかな?

 

もはや「アイドルと遊びたくて年齢偽って近づいてくる女なんてたくさんいるんだから用心が足りない」の段階じゃないと思う。「事後の写真撮って週刊誌に売る女に気をつけろ」とかいうレベルでもない。アイドルと付き合えなくたってあんまり金にならなくたって、ネットをおもちゃにして遊びたくてそれっぽい証拠を(週刊誌は手を出さないような怪しいものでも)手に入れればOKな人間が、盗撮の機会を狙って録音ボタンを押して近づいてくるのだ。

そんなストレスフルな社会でアイドルとしてステージに立っている。

彼らはアイドルだから堂々と女性と付き合って結婚して家族を作ることはままならない。日々の疲れを癒やす手段としてこの選択肢がなくなるだけでもずいぶんな制約だと思う。(別にこれがなくても大丈夫な人はいるとかいう話ではなく、一個人として選択肢が失われている・制限されているという話)

 

払う犠牲以上にアイドルとして手に入れられる幸せがたくさんあるんでしょ?なんて簡単に言えない。この状況下でもアイドルで居続ける幸せが勝つのか、決めるのは彼ら自身だ。

彼らがアイドルとしてステージに立つことを選ぶ時、ファンの私はそれを楽しめるのだ。

 

私はもうこれ以上彼らに多くを求めたくない。今後も用心は重ねていてほしいが、それは彼ら自身のためや彼らがごく普通に「仕事」で負う責任を果たすためであってほしい。もちろん犯罪や道徳に反する行為があってはならないが、「完璧なアイドルとして」ファンの目を恐れるような生活は送ってほしくない。

 

そう、私は「隙のあるアイドル」を愛おしく思うのだ。

今回のことに、ばか!何やってんの!って思っても、優しすぎてうっかり甘くなっちゃって、芸能界なんてわけのわからない世界なのに性善説で生きちゃってそうな、そんな自担が好きで好きで堪らないのだ。(ちなみに彼が頭悪いとか思ってないよ。ていうか私、今回明らかにされている状況で正しい行為を遂行できるような意思の強さと実行力を併せ持っていない。自分ができないのに他人に石を投げたくない。できる人のことはもちろん尊敬する。)

そうそう、1ヶ月前のこのツイートは嘘じゃない。

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私は彼らのファンになったときから、自分はあくまで「消費者」だと意識している。ステージの上で輝き、表舞台から楽しませてくれる彼らに対価を払って「アイドルを消費」しているのだ。それで得られるものはその時に私が感じる幸福だ。「子猫ちゃん」だの「彼女」だの、Twitterで「ダーリン」なんてつぶやくのも、そういうエンターテインメントとして全力で楽しんでいる。「愛してる」と言われて照れるのも楽しい。

投資ではない。投資だと思ってしまったら、将来の見返りを求めたくなってしまうから。知らず知らずのうちに高い利息をつけて求めてしまうのは嫌だから。あんだけ貢いできたのに裏切られた!とか思いたくない。まぁ投資っぽいことはどうしてもしちゃうんだけど(笑)それでも私は「将来彼らがもっと活躍するため・彼らが輝く姿を見続けるため」だけでなく「私が買い足したこのCD1枚が後押しできるかもしれない」夢を見る楽しさを、今現在感じているのだと思っていたい。

 

 

もちろん違うスタンスでファンをやっている人はたくさんいるだろう。別にそれはそれでいい。楽しみ方は人それぞれなんだから。

今回のように、スタンスの違いから同じ「ファン」である現実に脱力してしまうことはある。そんなことまで求めるのかよ、今のままで十分アイドルを楽しませてくれてるじゃん余計なことするなよって。彼らにとってみたらファンの誰がネットで自分を糾弾してるかなんてわからなくて、ライブ会場にいる何%が日々自分の情報を探し回っているかなんてわからなくて、とにかく「ファン」と言ってしまえば私も含まれるんだよなぁとか思ったら、またあの自担の虚ろな目が私を見てくるの。

でも、多様性が失われたファンが健全だとも思えないのだ。散々「愚痴垢」とか書いてきたけど、あんまり理解できない部分はあるけど、少なくとも元々はファンであって、黒い気持ちを吐き出す場所が必要になってできたアカウントだろう。「表で言えない」同調圧力を感じて、黒い気持ちだけを吐き出す「裏垢」を作って、そしたらその「黒い部分だけ」に共感するアカウントが集まって増殖して、いつしか彼らに鉄槌を下す大きな意思が出来上がった。

私は楽しくファンをやっていたいがために、ポジティブなことばかりつぶやきがちだ。それはTwitterをファンとしての応援ツールと見なしているからだ。気になることを吐き出す場所はTwitterの外だ。簡単に検索ができてすぐに拡散されうる場所だから、使い方を限定している。自分がフォローするのもどうしても似たスタンスの方になってしまっていると思う。

けれどファンの中には、ネガティブな気持ちだって誰かに吐き出したい、できれば共感をもらいたくて共感できるものを見つけたい人もいるだろう。もしかしたら今、あの音声を拡散した日を思い出して「こんなことは望んでいなかった」という収拾のつかない気持ちを抱えているかもしれないし、「いやこんな裏垢にそんな影響力ないし」と思っているのかもしれないし、「自分は正しいことをしたのだから」とさらなる正義を進めているのかもしれない。

人のことばかりは言えない。「ネガティブなことは表立って言えない」そんな土壌を作り上げたファンに私は加担していると思う。ネガティブな思いを受け入れる寛容性を持たずに締め出した、私の拒絶が巡り巡って彼らに鉄槌を下したのかもしれない。 

 

省みるべきは私自身でもあるのだ。